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記者ひとり言 「失敗をめぐる話」 (宮)
米国の文献データ会社が先ごろ、ノーベル賞受賞候補者の予測を発表、世界各国の研究者17人の中に、日本から、飯島澄男名城大教授と戸塚洋二東京大特別栄誉教授の2人の名前が挙げられた。

飯島氏はチューブ状に炭素原子がつながる「カーボンナノチューブ」を発見、戸塚氏は物質を構成する基本粒子ニュートリノに質量があることを突き止めた業績により受賞候補に挙げられたという。

10月はノーベル賞発表の季節。日本人受賞者の誕生に期待が高まるが、受賞の成功物語とは別に、失敗をめぐる物語にも傾聴すべきものがあると思う。

飯島氏は既に一度、ノーベル賞を逃している。氏は電子顕微鏡の専門家で、その技術を駆使しさまざまな物質のナノ結晶の観察研究を積み重ねた。

業績の中に「球状グラファイト構造」の発見があり、その中心にはフラーレンという、炭素原子が球状に結合した分子があった。

しかし、氏は当時未発見だった分子を前に、それを論文として発表することはなかった。見ていたにもかかわらず、その価値を正しく認識できなかったのだ。

その後、フラーレンは海外の研究者たちにより“再発見”され、彼らにはノーベル賞が与えられた。

一生に一度あるかどうかという大発見を見過ごしてしまった経験が飯島氏にどれほど大きな挫折感を与えたか、素人にとっても想像に難くない。

しかし、その後も飯島氏は精力的に研究を続けた。カーボンナノチューブの発見は、挫折を味わったフラーレンの生成機構を解明する研究の中で生まれたものだという。

[2007-09-22-02:09]
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